2022 02.28
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さかなはやっぱり魚屋だ。「サスエ前田魚店」
焼津に友人が来たら、まず連れて行きたいお魚屋さんがあります。
それが「サスエ前田魚店」。
水揚げ金額・日本一の焼津で60年以上の歴史を持つ老舗です。
現在の店主であり5代目の前田尚毅さんは『情熱大陸』などのテレビ番組や有名雑誌でも度々取り上げられるほどの凄腕。
取引先には、ミシュランの三ツ星を取ったシェフも数多くいます。
それでも「サスエ前田魚店」が目指すのは、代々続く焼津に根ざした魚の専門店。
地元の人にその時々の魚を楽しんでもらうのはもちろん、県外からの旅の目的地となるような「食」を提供し、静岡に人を呼び込みたいという思いを持っています。
いつも地元のお客さんで賑わっている
この日も店内は大繁盛。
子連れのご家族や若いカップルなど、多くのお客さんがサスエさんの「魚」を求めて押し寄せます。
それもそのはず。店内には地元で獲れた魚を中心に、美味しそうなお刺身がずらり。
焼津港水揚げの近海カツオ、小川港水揚げのタチウオの炙り、ミナミマグロやトンボマグロ、アジのたたき、高級魚のハタに、カンパチ、トリガイ・・・。
つややかなお刺身が贅沢に盛り付けられています。
魚の仕入れは、季節はもちろん、その日の天候や潮の流れでも変わるそうです。
それでもサスエさんに行けば、その日一番の旬のお刺身が食べられる、そんな期待と安心感があります。
無類の魚好き、5代目店主 前田尚毅さん
お刺身の並ぶガラス棚の向こうの調理スペースに、店主の前田尚毅さんがいました。
身が引き締まり、脂がのった冬のブリをお刺身に切り分けている最中でした。
包丁を握る手つきは真剣そのもの。
いまや全国の一流シェフや海外からも問い合わせが殺到する前田さんですが、
ここまできたのは、愚直なまでに毎日を積み重ねてきたからとのこと。
前田さんは小学生の頃から、代々続くお店を継いで「魚屋になる!」と決めていたそうです。
当時から夏休みは店を手伝い、高校生になってからは登校前に市場の競りの記録係をしていたほどです。
とはいえ、当時はやんちゃの盛り。休みなく働く父や祖父の背中を見て、「ぜってぇ魚屋やんねえ」と思ったときもあったとか。
ところが今では、「ひたすら仕事に打ち込んできた先代たちの気持ちがよく分かるようになった」と話してくれました。
「だって魚が好きだから。それだけ」
料理人に一番の魚を届けるために、魚を探し求めて40時間寝ないこともあるそうです。
それでも「好きなことをひたすら楽しんでやっているだけ」と前田さんは笑います。その目は少年のようにキラキラしていました。
初代から続く「小売店」としてのこだわり
こちらが先代(4代目)であり、前田さんのお父様の博さん。
サスエ前田魚店には、初代のときから続くこだわりがあります。
それは小売店であること。
魚の専門店として、魚を仕入れ、適切な処理をして、私たちの口に入るまで、首尾一貫して手がけることを大切にしています。
むかしは、肉はお肉屋さん、野菜は八百屋さん、魚はお魚屋さんに買いに行くというのが一般的でした。
いまは大きなスーパーがその役割を一挙に担っています。それはそれでとても便利な面があります。
しかし、サスエさんには魚の専門店だからこそ「くすぐったいところをやれる」という自負があります。
「いわゆる高級魚でなくても、一尾50円のイワシでも、しっかりとした扱いをすればこんなに美味しいんだ、と人を驚かすことが出来るんだ」と言います。
サスエ前田魚店には、毎日の一皿を買い求めにくるお客さんがたくさんいます。
必ずカツオのお刺身を買うお客さんもいれば、「今日の白身は?」とその日ごとの魚を楽しみにしているお客さんもいます。
お客さんの「美味しい」の一言を大切にする、まさに街の魚屋さんです。
これからも魚屋、これからの魚屋
前田さんがいま思い描いているのは、バトンを繋ぐこと。
漁師さん、魚屋さん、料理人、そしてお客様──。
それぞれがバラバラに戦うのではなく、お客様の「美味しい」の一言のために、皆がチームとなって魚の価値を高めようとしています。
そのために漁師さんにも魚の締め方を伝え、料理人にもそれぞれの調理に適した魚の処理を提案しています。これはリオ五輪で、日本の陸上男子400mリレーが世界2位になったのを見て、個々の力をこえた価値をチームワークで生みだせることを再発見したからだそうです。
そして、前田さんはこのバトンを次世代に繋ぐことも意識しています。
「自分たちがいま食べて美味しいと思うものを小僧とか娘とか、孫とか、自分が亡くなったその先まで置いておきたいじゃない」
そのために魚屋さんとして出来ることの一つが、魚一尾ごとの価値を、チームワークで高めることなのだと思います。
サスエ前田魚店は、地元に根ざした、焼津のお魚屋さんです。
グランメゾンのシェフたちを支える前田さんの一皿が、今日も気軽に買えちゃいます。その日のおすすめを聞けば、スタッフの皆さんが元気に教えてくれます。
魚の専門店が手がける自慢の一皿をぜひご賞味あれ。
頬がとろけて、笑みがこぼれ、もうリピート間違いなしです!