folkknotcafestir

2021 09.20

  • 川根本町
  • グルメ

ただいまと帰りたくなるカフェfolkknotcafeSTIR

金谷駅から大井川鐵道に乗り、
電車に揺られ、
川に沿って山を登っていく。

電車内はドラマのワンシーンに出てきそうな内装で
思わずカメラのシャッターをきる。

正直、東京は息が詰まりそうだ。
見渡せば人。ビル。ネオン。
洗練され、魅力的なものがたくさんある。
東京に住む自分までもが、
その[魅力]の一部でなければいけない気がして
高いヒールを履いて、
少しお高いランチを食べる。

時にはその魅力から、
魅力的であろうとする自分から
解放されたくなる。

そんなことを考えながら
移り変わる景色を愉しんで窓の外を見ているうちに
終点の千頭駅にたどり着いた。

電車を降りると広がる大自然。
あぁ、山奥に来たのだと実感する。

folkknotcafestir

朝一で東京を出たはずなのに
気がつけば時計の針は真上を指し、
空腹であることを私に知らせていた。

「何か食べたい…」
見渡すといくつか飲食店がある。
右手に見えるアイスに目がいくが、
今の私の空腹は、アイスじゃ満たせない。
昔ながらのお食事処という感じが詰まったお店もいい。

あまり考えずに服を選んだものだから、
仕事とあまり変わらない格好をしている。
長いスカートにヒール姿の今の私は、浮いてしまいそうで入るのを躊躇う。
せっかく気分一新しようと遥々来たのだから、
人の目なんか気にせず、食べたい。
お腹いっぱい美味しいものを食べたい。

そんなことを考えながら
お腹を満たそうと駅前を放浪していると何やら賑やかな声が聞こえてくる。

観光案内所の上からのようだ。
近づくと看板が置いてある。

folkknotcafestir

「folkknotcafeSTIR….?なんて読むんだろ。」
看板にかけられたメニューを見ると、ジビエ料理もあり、観光気分を満喫するのにもよさそうだ。

「ここにしよう」
階段をあがると明るい声が私を迎えた。

「こんにちはー!お好きなお席をご利用ください!」

folkknotcafestir

表参道を思い出すようなお洒落な店内に親しみを覚える。
けれども都会の騒がしさはなく、ホッとして過ごすことができそうだ。
窓はフルオープンで、まるで外にいるかのような開放感。


山を見ながらの食事なんて、表参道ではできない。
なんて贅沢な空間。

チキンカツやハンバーグなどを何も考えずにたらふく食べたい…!そんな思いにも駆られたが、やはりここまで来たのだからジビエは外せない。
悩んだ末に店員さんの「鹿肉は高タンパク低カロリーなんですよ。」の一言で鹿肉のローストに決めた。

「入り口のお茶、フリードリンクなのでお飲みくださいね!」

そこには2種類のお茶が置いてあった。
お茶屋さんの名前も記載されていて、地元のお茶屋さんから仕入れているそうだ。

「んまっっっ!」
乾いた喉に染み渡る。それにしてもお茶ってこんなに美味しかったっけ。
やっぱりお茶のプロが淹れると違うんだなと感心する。

「本当に、美味しいですよね。私達もこっちに移住してきてお茶の美味しさを実感しました。水出しなんで簡単ですよ。」

私の美味しさの余り出てしまった声に反応して店員さんが話しかけてきた。
水出しのお茶とは最近よく聞くが、お茶を自分で淹れることもなく、あまりピンとこなかった。
どうやら、水に茶葉を入れて一晩置くだけでいいらしい。



「お待たせしました。鹿肉のローストです。」

ミディアムレアに焼かれた鹿肉とたっぷりのお野菜。なんて優雅な時間。
鹿肉は柔らかく、臭みもなく美味しい。それでいて、高タンパク低カロリーなんて、なんて幸せなんだ!

空腹だった私は一瞬でワンプレートを完食した。
しっかりお腹はみたされているのに、誘惑には勝てない。


店員さんが運ぶクリームソーダが目に入り、メニューを見ると、【大井川クリームソーダ】と書かれている。
デザートはこれで決まり。
追加でクリームソーダを注文する。

「天然色素のみでお色を着けているので、安心して召し上がっていただけます!アイスの
上に岩塩がのってるので塩バニラアイスとして食べてください」

エメラルドグリーンと青色のグラデーション。透き通った色に夢のつり橋を想起する。

「とても綺麗ですね。」
普段は店員さんとの会話を好まない私だが、親しげな様子から何故か話をしてみたくなった。

「ありがとうございます!大井川の大井川ブルーをイメージしたんです。」
「夢のつり橋ではないんですね!」
「夢のつり橋をイメージしてくださる方が多いんですが、住んでる身からすると、大井川自体がこの色で日々それに癒やされている感じがしているんですよね。」

移住したからこそ感じるものなのだろう。

他所から来た私はパンフレットで見る夢のつり橋のイメージしか出てこなかった。

「そうなんですね。帰りは意識して見てみます。」
店員さんとの会話からこんな発見があるとは思ってもなかった。
会話するのも悪くないかも。

私が今まで嫌ってきたのは、相手の顔色を伺い、それに合わせて会話することだったのかと気づき、少し自分に呆れもした。

「すぐ近くから川辺に行くこともできるので、お散歩するのも気持ちいいですよ。」
お姉さんの笑顔にホッとし、
思わずいろいろなことを話したくなったが、恥ずかしさの残る私は
「ありがとうございます。行ってみます。」と返すのが精一杯だった。

「また待ってますね。」
その一言が、社交辞令ではなく、私自身に向けられた言葉であると確信できたのは、この山奥の田舎という土地柄か、お姉さんの人柄か、それともそのどちらもか。
どちらにせよ、私はこのカフェでホッとし、自分を少しばかり取り戻した気がする。

お店をあとにしようとした時、一つ気になっていたことを思い出した。
「あの‥店名は何と読むんですか?」

「スターです。ステアと書いてスターと読みます。いろんなものをかき混ぜるという意味がありながら、混ざり合うことで輝いていくお店でありたいと思って。」

「…いいですね。」
ありきたりの言葉しか出ないのが悔しい。
というのも、店内を体現する店内の雰囲気から、何となくわかっていたからだろう。
驚きや発見よりも、納得という言葉がしっくりときた。



「また来ます」

何の確証もなかったが、何故か必ずまた来ると思えたのだ。
遠くからでも、時間をかけてでも、来たいと思えるお店に出逢えたことが私は嬉しかった。

名称
Folk knot cafe STIR(フォーク ノット カフェ スター)
電話番号
050-5894-2622
営業時間
水曜〜金曜:午前10時 ~ 午後6時
土曜・日曜:午前9時 ~ 午後6時
定休日
毎週月曜日、火曜日
Instagram
@folkknotcafe_stir
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